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当社では、会社全体でも、各部署でも、歓迎会、送別会、お花見、暑気払い、忘年会、新年会等の懇親会が盛んです。こうした懇親会は、親睦を深めるのにはよいと思いますが、参加が半ば強制されており、事実上、勤務の延長になっていますが、労働時間には算入されていません。こうした懇親会への参加は時間外勤務であると主張して、時間外手当を請求することはできますか?

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純粋に社員相互の親睦を深めることを目的とする有志の懇親会の場合、参加それ自体を時間外勤務と主張することは難しいのではないかと考えられます。

一方で、労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たるとされていますので、懇親会に参加していた時間が労働時間と認められる可能性があります。

また、業務災害について、事情場外での懇親会の業務遂行性の有無が争われた事案において、①懇親会を行うことが、事業運営上、緊要なものと客観的に認められ、かつ、②労働者に対して懇親会への参加が強制されているときには、労働者の懇親会への参加は時間外勤務になるとする裁判例があるので、こうした場合にも、懇親会に参加していた時間が労働時間と認められる可能性があります。

 

1.労働時間の概念

(1)厚生労働省のガイドライン

この点について、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日)では、

「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。」とされています。

 

(2)裁判所の考え方

業務災害について、事情場外での懇親会の業務遂行性の有無が争われた事案において、

①懇親会を行うことが、事業運営上、緊要なものと客観的に認められ、かつ、②労働者に対して懇親会への参加が強制されているときには、労働者の懇親会への参加は時間外勤務になるとする裁判例(名古屋高金沢支部判昭和58年9月21日労働関係民事裁判例集34巻5~6号809頁(福井労基署長事件))がありますので、①②の要件がいずれも満たされる場合は、懇親会に参加していた時間が労働時間と認められる可能性があります。

 

この点、亡くなった労働者が使用者の業務として行った出張中にアルコールを大量摂取し、その後に嘔吐し、吐しゃ物を気管に詰まらせて窒息死したことが労働者の業務上の死亡に当たると亡くなった労働者の両親が主張したが、労働基準監督署長が遺族補償一時金等を不支給処分にしたので、両親がこれらの不支給処分の各取消しを求める事案において、

「これらの事情からすると、亡Aにおいて、本件第2会合において、積極的に私的な遊興行為として飲酒をしていたと評価すべき事実を見いだすことはできず、むしろ、本件第2会合における「乾杯」に伴う飲酒は、本件中国ロケにおける業務の遂行に必要不可欠なものであり、亡Aも、本件日本人スタッフの一員として、身体機能に支障が生じるおそれがあったにもかかわらず、本件中国ロケにおける業務の遂行のために、やむを得ず自らの限界を超える量のアルコールを摂取したと認めるのが相当である。」として、両親の遺族補償一時金等の請求を認めなかった不支給処分は、いずれも違法であると判断しました(東京地判平成26年3月19日労判1107号86頁(国・渋谷労基署長(ホットスタッフ事件)))。

 

また、労働者が交通事故により死亡したことに関し、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付等の支給を請求した妻が、労働基準監督署長から、亡夫の死亡は業務上の事由によるものに当たらないとして、不支給決定を受けたため、その取消しを求めた事案において、①亡夫は、

上司の意向等により歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、歓送迎会の終了後に業務を再開するために工場に戻ることを余儀なくされた、②亡夫が途中参加した歓送迎会は、

上司の意向により当時の従業員7名及び本件研修生らの全員が参加し、その費用が本件会社の経費から支払われ、特に研修生らについては、アパート及び飲食店間の送迎が会社所有の自動車で行われ、その事業活動に密接に関連して行われた、③亡夫は、業務再開のため車両を運転して工場に戻る際、併せて研修生らをアパートまで送っていたが、

もともとこの送迎は上司により行われることが予定されており、工場及びアパートの位置関係に照らし、飲食店から工場へ戻る経路から大きく逸脱するものではなかった等の事情からすれば、

「本件歓送迎会が事業場外で開催され、アルコール飲料も供されたものであり、本件研修生らを本件アパートまで送ることがE部長らの明示的な指示を受けてされたものとはうかがわれないこと等を考慮しても、Bは、本件事故の際、なお本件会社の支配下にあったというべきである。

 

また、本件事故によるBの死亡と上記の運転行為との間に相当因果関係の存在を肯定することができることも明らかである。」と判断されました(最二小判平成28年7月8日労判1145号6頁(国・行橋労基署長(テイクロ九州)事件))。

 

2.具体的な判断

懇親会が労働時間に当たるかどうかについては、前記の一定の判断基準はあるものの、上述のとおり、個別具体的な事情によって結論が左右されます。

本件のような事例でも、労働者が時間外手当を請求できる可能性は十分にあると考えられますので、まずは、弁護士にご相談なさってみてください。

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